“花で伝える想い”を「届ける」花屋 ― マチノイロセイカテン × 米田木材 ―
- お店紹介
- 会社の取り組み

花を“買いに来てもらう”のではなく、“届ける”。
射水市の花屋「マチノイロセイカテン」は、そんな少し特別なスタイルで花を届けている。店舗を持たず、注文を受けてから一本一本仕入れ、贈る人に合わせた花をつくり届けている。
「花で伝える想いを届けたい」
その想いを胸に歩んできた代表の浜井さんの姿勢は、米田木材が大切にしている“豊かで幸せな暮らしづくり”の姿勢とも、重なる部分が多い。米田木材の編集部として、そう感じる理由をインタビューを通して探った。
花が支える米田木材の文化
マチノイロセイカテンは、花そのものというよりも、贈る人、受け取る人、花屋を中心に広がるコミュニティなど、それぞれのライフスタイルに寄り添った「豊かさや心地よさ」を提供している。在庫を持たない“受注生産”スタイルを採用し、丁寧にヒアリングを行い、贈る相手の雰囲気や好みを聞き取り、その日市場で仕入れる花を決める。花材は一本からでも仕入れ可能であり、細やかなリクエストにも応えられるようにしている。
同じく米田木材も、お客様に「見た目の美しさ」や「流行りのスタイル」という価値よりも、入居した後の「暮らしを楽しむ」「人生をより豊かにする」という価値を届けている。その人らしさ、その家族らしさを大切に、心から心地よいと感じられる空間を提案している。
さらに米田木材では、お客様だけでなく、社員に対しても同じ価値を提供している。その一例として、社員の誕生日に社長から花とメッセージカードを贈る文化がある。その花を社員に届けているのが、マチノイロセイカテンの浜井さんである。社員の名前と日付を預かり、一人ひとりに合わせた花を選び、届ける。その積み重ねが「社員を大切に思う」という米田木材の文化を支えている。

「“毎年届く花”は、人生のなかでとても貴重な記憶になると思う。誰かが自分のことを覚えていて、しかも自分のために花を選んでくれていた──そんな経験は、そうない」と、浜井さんは文化の担い手としての想いを、インタビューの中で語った。
「家」と「花」。一見すると共通点が無さそうに見えるが、共通した想い・価値観が交差し、人と人をつなぎ、豊かな暮らしを共につくっている。
花との出会い
「花で伝える想いを届けたい」
その想いの原点は、中学2年の職業体験にある。 職業体験で出会った地元のフローリスト。その立ち振る舞いや言葉に惹かれ、「花屋って、かっこいい仕事なんだ」と初めて知った。
「花が好きだった、というより“人に憧れた”んです」
これがきっかけで花の世界に飛び込むことを決意。地元の花屋や結婚式場で経験を積んだのち、3年で独立した。
「花屋は、資格がなくてもできる仕事だからこそ、“姿勢”が大事。誰のために、どんな風に、何を届けるのか──そこに覚悟が必要」
決して簡単な決断ではなかったが、「お客様ともっと深く向き合いたい」という想いが背中を押した。

ゆっくりと根付く花の文化
2024年7月、射水市新湊に24時間営業の無人花屋「クラシカル」をオープンした。
新湊にいる知人から提案を受けたのがきっかけで、「花を文化として残すために、いま必要な場所がある」と感じ、初めての実店舗を持つことを決意した。
中心となるのは仏花や榊。特別感のあるギフトではなく、日常に寄り添う花を誰でも気軽に手にできるようにし、セルフ決済・無人の仕組みを導入した。

クラシカルはオープンしてまだ数か月であるが、実際にお店を利用した人から聞いたエピソードがいくつかある。
●育休中のこと。いつの間にか花がある生活から遠ざかり、日々の生活を精一杯過ごしていた。誕生日に届いた花をきっかけにマチノイロセイカテンを知り、長女を連れてクラシカルへ。娘が選んだのはたった一本のひまわりだった。花を持ってはしゃぐ娘の笑顔を見た瞬間、「育児は楽しいだけではなく辛いことも多い。しかしこの娘の笑顔を見た瞬間、疲れも辛さも忘れることができた。花は、人をこんなにも幸せにするのだ」と花が持つ力に気づかされた。
●インタビューをきっかけにマチノイロセイカテンを知った社員のご主人が、仕事帰りに立ち寄って榊を購入した。「花屋で花を買うのは、男性にとって少し勇気がいる。しかしここなら気兼ねなく選べるし、24時間だから時間を気にせず会社帰りに立ち寄れる」と話した。
「花屋は、少し入りにくいという声がある。そういう人にも気軽に立ち寄ってほしかった」と、男性オーナーならではの意見も反映し、このスタイルになった。
クラシカルは、買いやすさだけでなく「花と出会う時間」を取り戻す場所でもある。
新湊という静かな町なので、文化が根づくのはゆっくりかもしれない。しかしそんな町だからこそ、実現できることもある。
地域の人々が水を替えたり世話をしたりしながら、長くこの地域に暮らす人々の憩いの場になったり、子育て中の人や子どもたちの集いの場にもなる──そんな“参加型”の拠点になることも視野に入れているという。

花が紡ぐ豊かで幸せな暮らし
マチノイロセイカテン浜井さんの花は、誕生日や祈りの場面だけでなく、日々の暮らしのなかで「心の豊かさ」を生み出す。
花は関係性の記録であり、心の備忘録であり、生き方の選択肢をそっと示す道具である。
米田木材とマチノイロセイカテン。届けるものは違っても、「豊かで幸せな暮らしをつくる仲間」という点では同じである。
この町には、日々の暮らしを大切にする人がいて、文化の種を蒔きつづける人がいる。
浜井さんの花は、これからもその芽吹きをそっと後押ししていくだろう。

YG TIMES編集員
柏木 彩夏
2019年に中途採用で入社し、現在は入社7年目。所属は事務部だが、部署を超えて色々な業務にチャレンジしている。YG TIMESの編集やインナーブランディングに携わる。昨年育休を終えて職場復帰。職場での学びを育児にも活用し、豊かな暮らしを実践中!